2020年4月1日施行の労働基準法改正により「賃金請求権」が「2年」から当分の間「3年」になりました。
これは2020年4月以降の支払日に発生する賃金請求権の時効消滅が3年になるという事です。
そのため、会社は労働者(退職者を含む)から未払いの賃金を請求される可能性が高まります。
今まで、請求したくても弁護士費用が高額で諦めるパターンが多かったのですが、1年伸びた事によって、採算が取れるケースが増えるからです。
<会社が今一度チェックすべき事>
①法定労働時間の超過分について適切に支給していますか。
→1日8時間超えを適切に払われている会社が多いですが、週40時間越えの未払いは未だに多いです。
②10時から翌5時の労働時間について深夜割増を支給していますか。
→0.25倍の割増を行う必要があります。
③時間集計の際に不当な「丸め」を行っていませんか。
→「1分」単位で支給する必要があります。特に30分以上の丸めを行っている場合は要注意です。
④月給から時給単価を計算する際、含める手当があるのに基本給のみで計算してませんか。
→残業手当やインセンティブなど毎月金額が変動する手当、実費の通勤手当などは除いて良いのですが、それ以外は基本的に含めます。皆勤手当(精勤手当)も含めます。住宅手当(住宅補助)や家族手当などは性質によって含めるべきか含めなくても良いかが決まるので要注意です。また、1ヵ月の平均所定労働時間を実態とかけ離れた月時間に設定している場合も注意です。
⑤変形労働時間制を導入していても適切に稼働していますか。
→協定を結んだり就業規則に規定していても、実態として適切に稼働していなければ、制度が認められず、再計算のうえ未払い賃金が計上される可能性があります。変形労働時間制の詳細についてはこちらをご覧ください。
⑥固定残業代(みなし残業代)の超過分について未支給はありませんか。
→金額を設定していても、設定時間が曖昧なケースがあります。そのような会社であるほど、毎月の残業計算を怠っており、超過分について未払いが発生している事が多いです。そもそも就業規則に規定していなかったり、雇用契約書など記載が欠落のケースもあります。
⑦協定を結んでいないのに給料から天引きしている費用はありませんか。(保険料や税金は除く)
例)会費、修理代、クリーニング代など
→前もって「賃金控除に関する協定書」を締結しておく必要があります。
⑧特例措置の週44時間として計算しているが、就業規則への記載や労使協定の締結、雇い入れ時の雇用契約書などに記載をしていますか。
→欠落していると、週40時間として計上される可能性があります。
<結論>
今後、会社として請求リスクを軽減するために、上記①~⑧に該当する場合、労務管理の見直しが望まれます。
上記を毎月繰り返すということは、未払い残業代を請求されるかもしれない、という爆弾を大きくする行為なのです。
そのため、該当する場合なるべく早く1項目からでも改善する事をお勧めします。
ご不安な場合、御社の状況をチェックしますのでお気軽にご相談ください。
<労働者側が用意しておくもの>
・出勤簿(タイムカード)or 日報など ←念のため写真を撮っておきましょう。
・給与明細
・雇い入れ時の雇用契約書や労働条件通知書
・就業規則(賃金規定)
(有効な規則がある場合、会社は従業員に交付するor自由に閲覧できる場所に保管する必要があります。)
資料が揃っているほど、請求が成功する可能性が高まるので、揃い次第では相談料や着手金が無料になり、20~30%の成功報酬のみ、という価格設定の事務所もあるようです。(もちろん、弁護士先生も時間対効果を意識されるので成功報酬が〇〇万円以上の場合に限り受けます。という条件もあると思います。)